2006年10月13日金曜日

国は『はじめに食料自給率の向上ありき』で危機感だけを煽っている」(本間正義)



この三日、日経新聞夕刊「生活コンシューマー」欄では食料自給率の特集。「自給率の 向上のためにはトリのから揚げを食べてはいけません、サバの味噌煮を食べましょう」とかの子宮的ヒステリックな論調ばかりで、日経は一体どうなってしまっ たのだろうかと心配していたら、今晩(最終回)は「自給率向上を唱えること自体おかしい」との識者インタビューで締めくくり。ホッとした。きっと「食育担 当」女性記者の暴走を編集長が食い止めたのだな。

東京大学本間正義教授の発言抜粋:
  1. 食料の安定供給は国の責任だが、自給率向上だけがその方法ではない。将来にわたって海外から食料を安定的に輸入し続ける道を模索する手もある。
  2. なのに国は自給率を上げることにこだわる。「国民のため」といいながら、消費者の利益にならない自給率向上策に取り組んでいる。
  3. 食糧自給率は消費の結果であって、政治的に操作できない。40%の自給率も国民の選択の結果だ。昭和30年代の自給率は7割を超えていた。ただ当 時の食生活は牛肉料理が月に一回程度、豚肉料理にしても一〜二回がいいところ。その後の経済成長で様々な食材を手に入れられるようになった。
  4. 国は自給率目標45%を掲げ、農産物の生産を増やす必要があるとしている。どれだけのコストがかかるのか? 財源はあるのか? 議論の材料となる情報を開示すべきなのに、国は「はじめに自給率向上ありき」で危機感だけを煽っているように思える。
  5. 国際紛争が勃発し、緊急事態となれば食糧生産に必要なエネルギー輸入さえ途絶えてしまうので、国内で生産する体制を整えていたとしても備えにはならない。
  6. 日本は確かに食糧自給率が低い。それは国外から食糧を輸入できる国力があるからでもある。自給率は本来、政策的に上げたり下げたりするものではない。

あわせて農業ジャーナリスト、青山浩子氏へのインタビューも。発言抜粋:
  1. 豚肉のカロリーベースの自給率は5%。輸入飼料がカウントから除外されるから。重量ベースの自給率は50%。
  2. 元々カロリーベースで自給率を換算するのは日本と韓国ぐらい。重量ベースが世界で一般的。生産額ベースで見ると、日本の自給率は70%近くを保っている。
  3. 国の政策目標である45%達成は、難しい。トウモロコシなどの飼料は100ヘクタール以上の大規模農場で栽培してこそ採算が合うが、日本の狭い農地では(どうせ大規模化などは農民団体の反対でできないだろうから)難しい。
  4. 農業は元々天候に左右されやすいビジネス。台風などで出来が悪くとも、今は輸入の代替ルートが確立されつつある(国が敵視する輸入農産物が国民の救いとなっている)。

食糧自給率については小生の見解を述べた:

生源寺眞一:講演「農業・農村のゆくえと日本社会」……徹底的にクサイ! 

小生ばかりじゃなく、いろんな人も同じような考えを示している。別スレッドで寄せられたコメント:

http://www.haloscan.com/comments/naoyuki/E20060927205442/#372458 

はこのエントリーに大して寄せられたコメントです:

農協新聞でまた梶井功氏が喚いている……いい加減に往生したらいいのに! 

繰り返して言う。手前らへの利益誘導のためだけに自給率の数字を使うな! どうしても自給率を向上させたければ、国民のニーズに沿った食料生産体制を自分らで整備しろ。100ヘクタール以上の農地をお父さん一人で耕作すること。欧米では当たり前のことだ。






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Posted: Fri - October 13, 2006 at 06:51 PM   Letter from Yochomachi   農業問題  Previous   Next   Comments (6)

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